SANEI(サンエイ)IPOが東証2部市場に新規上場承認されました。今回も業績や上場規模などを確認し評価していきたいと思います。
主幹事は大和証券が務め公開株数460,000株、オーバーアロットメント69,000株です。上場規模は想定発行価格2,200円から計算すると約11.6億円になります。
世界同時株安の中で東証2部上場は不人気だと考えています。通常であれば簡単に吸収できるはずですが厳しい展開が予想されます。業績は横ばいなので割安であれば買い需要も期待できるかもしれません。
会社設立から59年以上経過(創業からは65年経過)している老舗企業です。水栓金具市場は2018年度で1,122億円の市場規模と言われ、そのうち約50%は住宅への水栓金具供給、残りの50%は非住宅への水栓金具供給という構成だそうです。
サンエイは約60%を住宅への水栓金具販売となっており、上場後はグループ事業シェア拡大に向け、非住宅(オフィスビル、ホテル、公共設備)への水栓金具販売に注力していくそうです。
一般住宅からオフィスビル等へシフトするために上場という選択をしたようにも伝わってきます。売上は前期で208億円となっているため事業規模も大きいようです。ただ業種が地味な「機械」になっているためパフォーマンスは悪そうです。
SANEI(6230)IPOの上場基本データと引受幹事
項目 | 上場基本データ |
市場 | 東証2部 |
業種 | 機械 |
事業内容 | 給排水器具等の製造販売 |
上場日 | 上場中止 |
ブックビルディング期間 | 4月09日~4月15日 |
想定価格 | 2,200円 |
仮条件 | 4月07日 |
公開価格 | 4月16日 |
企業情報 | http://www.sanei.ltd/ |
監査人 | ひびき監査法人 |
【手取金の使途】
手取概算額509,100千円及び「1 新規発行株式」の(注)5に記載の第三者割当増資の手取概算額上限139,915千円を合わせた手取概算額上限649,015千円については、岐阜工場における生産設備に係る設備投資に充当する予定。具体的な資金使途の内容及び充当予定時期は以下の通りであります。
①岐阜工場における鍍金設備更新の投資資金として、50,000千円を充当する予定
②岐阜工場における加飾鍍金設備の投資資金として、80,000千円を充当する予定
③岐阜工場における砂型鋳造装置・ワンホールシングルレバー混合栓及びサーモ混合栓の製造設備の投資資金として、519,015千円を充当する予定
なお具体的な充当時期までは安全性の高い金融商品等で運用する方針であります。
※有価証券届出書(新規公開時)引用
項目 | 株数データ |
公募株数 | 260,000株 |
売出株数 | 200,000株 |
公開株数(合計) | 460,000株 |
オーバーアロットメント | 69,000株 |
上場時発行済み株数 | 2,220,000株(公募分を含む) |
想定ベースの時価総額 | 約48.8億円 |
幹事団 | 大和証券(主幹事) 野村證券 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 SBI証券 SMBC日興証券 |
委託見込 | SBIネオトレード証券 auカブコム証券 |
SANEI(6230)上場評判とIPO分析
想定発行価格2,200円を基に吸収金額を算出すると約10.1億円となり、オーバーアロットメントを含めると約11.6億円規模の上場となります。グループ企業は同社と連結子会社の合計3社で構成され、給水栓・給排水金具・継手及び配管部材の製造・販売を主な事業としています。給水栓とは単水栓、湯水混合水栓、止水栓、ボールタップ及び洗浄弁・洗浄水栓を総称するものです。同業他社は規模の違いはありますが約数十社あり、その中でも同社グループは水栓金具を専門で取り扱うメーカーです。
製品の特長としてはプロダクトデザイナーや、建築や空間を手掛けるデザイナーといった方にも積極的に協力してもらい、従来とは異なる水栓を提案しています。
インテリアを構成する素材の一つとして、その空間のコンセプトに調和するようなデザインの選択肢を提供する製品を揃えています。住まいやホテルの一般室で利用されているほか、スウィートルームやペントハウスなどの高級なゾーンにおいても採用しされる製品作りに力を注いでいるそうです。
住居以外の事務所ビルやアミューズメント施設、病院、介護施設、駅舎など人が集まる公共の場、いわゆる非住宅分野に使われる製品にも力を入れています。
今後、同社が製品開発面で目指す分野はエレクトロニクスとの融合だそうです。その中でも他社にはない製品を生み出す事が新たなライフスタイルの提案につながると確信しているそうです。
一般向け水栓や給排水用品等の水まわり商材のほか、付加価値の高いデザインや水の流れにこだわった高級水栓やスマートフォンのような静電タッチ水栓を製品化しています。
主な販売チャネルは、水まわり資材を取り扱う管材店への販売を主に行うルート、量販店への販売を主に行うルート、システムキッチンやユニットバスなどの住宅設備機器メーカーへの製品供給を主に行うルート、海外市場への輸出を行うルートの4つにわかれます。
この4つの販売チャネルと販路に対し全国に支店・営業所を設置し営業拠点展開を行っています。現在の営業拠点展開状況は三大都市圏である東京、名古屋、大阪に支店を設置しています。
支店を中心に管工機材ルートの主要顧客である管材店に対して、全国隈なく網羅的にサービスを提供できるよう24ヶ所の営業所を設置しています。
生産拠点の展開としては、岐阜県各務原市に主力工場である岐阜工場、大阪府大阪市城東区に組立工程専門の鴫野工場、中国大連市に大連三栄水栓有限公司を持ち生産を行っています。
現在の生産工場展開状況は岐阜工場を主力工場として位置付け、工場内には鋳造、加工、研磨、鍍金、組立、出荷と全工程を持ち、組立の鴫野工場、鋳造が中心の大連三栄水栓有限公司と連携して必要な生産数を確保しています。
また岐阜工場は水栓バルブ発祥の地と言われる美山地区の近くにあり、協力会社との連携を意識しています。
鴫野工場が最初の組立工場として1972年に開設、その後業務の拡大に伴い岐阜工場に拡張して全工程を所有することとなり、水回り製品を自社で一貫生産できる体制になっています。その後、生産コスト効率化のため中国に大連三栄水栓有限公司を設立しています。
SANEI(6230)の企業財務情報と配当性向
回次 | 第58期 | 第59期 |
決算年月 | 2018年3月 | 2019年3月 |
売上高 | 20,923,235 | 20,805,926 |
経常利益 | 1,248,994 | 938,064 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 831,942 | 608,972 |
包括利益 | 810,716 | 611,834 |
純資産額 | 7,684,434 | 8,237,469 |
総資産額 | 16,667,268 | 16,863,672 |
1株当たり純資産額 | 3,920.63 | 4,202.79 |
1株当たり当期純利益金額 | 458.74 | 310.70 |
自己資本比率(%) | 46.1 | 48.8 |
自己資本利益率(%) | 11.6 | 7.6 |
株価収益率(倍) | – | – |
配当性向(%) | – | – |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 924,847 | 750,787 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △353,810 | △239,091 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △267,703 | △543,545 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 645,361 | 604,175 |
- 売上高156億56百万円
- 営業利益8億8百万円
- 経常利益8億20百万円
- 親会社株主に帰属する四半期純利益5億38百万円
今期第3四半期累計の状況は製品をタイムリーに供給できるようさらなる製造・販売間の連携強化を行い、需要動向を速やかに生産計画へつなげる活動を進めたそうです。
営業面では本年5月千葉県千葉市に営業所を開設、栃木県宇都宮市にも出張所を開設しています。これにより新規顧客へのアプローチを強化し既存顧客への再開拓を積極的に進めることができています。
生産面では品質・コストの改善を柱に活動を進めています。また平準化生産と部品のリードタイム短縮にも取り組み生産性を向上しています。新設住宅着工戸数は4月~12月までの累計で68万9千戸で前年同期比6.5%減となっています。※出典:建築着工統計調査
SANEI(6230)の株主状況とロックアップについて
会社設立は1960年12月21日、大阪府大阪市東成区玉津1丁目12番29号に本社を構えます。社長は西岡利明氏(1958年7月14日生まれ)、株式保有率は34.69%(680,000株)です。従業員数623人で臨時雇用者145人、平均年齢38.9歳、平均勤続年数13.8年、平均年間給与4,806,000円です。連結従業員数は757人で臨時雇用者158人となっています。セグメントは水栓金具事業の単一セグメントになります。
氏名又は名称 | 所有株式数(株) | 所有株式数割合(%) | ロック |
西岡 利明 | 680,000株 | 34.69% | ○ |
吉川 正弘 | 680,000株 | 34.69% | ○ |
西岡 明 | 100,000株 | 5.10% | × |
吉川 弘二 | 100,000株 | 5.10% | ○ |
SANEI従業員持株会 | 100,000株 | 5.10% | ○ |
夏目 和典 | 60,000株 | 3.06% | ○ |
尼見 幸一 | 40,000株 | 2.04% | ○ |
【ロックアップについて】
本募集並びに引受人の買取引受による売出しに関連して、売出人かつ貸株人である西岡利明、売出人である吉川正弘及び吉川弘二、並びに当社の株主であるSANEI従業員持株会、夏目和典、尼見幸一、岸田敏雄、新田裕二、株式会社岡本製作所、株式会社坂井製作所、株式会社多喜プラスチック、株式会社田中工業、藤井義規、早川潔、江口裕章、安部慶尚、池田裕智、ヒフティー貿易株式会社、瀧勝巳、永川博和及び青山公一は主幹事会社に対し、元引受契約締結日から上場日後180日目(2020年10月20日)までの期間、主幹事会社の事前の書面による同意なしには、当社普通株式の売却等(ただし、引受人の買取引受による売出し、グリーンシューオプションの対象となる当社普通株式を主幹事会社が取得すること等を除く)を行わない旨を合意しております。
※有価証券届出書(新規公開時)引用
上位株主には180日間(2020年10月20日まで)のロックアップが付与されています。ロックアップ解除倍率の記載は目論見にありません。よって180日間は基本的に対象者は売却できません。
親引けは30,000株を上限として従業員の福利厚生のために行われる予定です。
SANEI(6230)IPOの初値予想と幹事引受け株数
大手初値予想は後日記載します。最新業績予想の他、仮条件発表後のPERやPBRなども後日追記します。※上場中止になったため業績分析と初値予想は再承認時に行いたいと思います
幹事名 | 配分単位 | 引受割合 |
大和証券(主幹事) | 414,000株 | 90.00% |
野村證券 | 23,000株 | 5.00% |
三菱UFJ・モルガンスタンレー証券 | 13,800株 | 3.00% |
SBI証券 | 6,900株 | 1.50% |
SMBC日興証券 | 2,300株 | 0.50% |
11.6億円規模の上場予定となり現在の地合いだと厳しいかな?と感じています。現在上場承認が行われている企業の株価設定はどれもコロナショック前の水準に合わせてある企業が多く割高になっているという話です。
通常であれば難なく吸収してしまう金額ですが市場が不安定の中で東証2部は選ばれない可能性が高いと思います。東証2部は成熟した企業が多く基本的に初値パフォーマンスが悪い市場です。3月19日に上場した日本インシュレーション(5368)は東証2部市場で約11.4億円の吸収ができず公開価格割れになりました。
主幹事はSANEI(サンエイ)と同じで大和証券が務めています。公開価格940円に対して初値869円、騰落率は-7.55%でした。地合いが低迷したままだと今回も厳しそうです。
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類似企業のPERやPBRを調べてみました
類似企業とPERやPBRは仮条件発表後に記載したいと思います。類似企業 | PER | PBR |
TOTO(5332) | PER22.49倍 | PBR1.78倍 |
LIXILグループ | PER17.51倍 | PBR0.7倍 |
KVK(6484) | PER6.82倍 | PBR0.52倍 |
ストックオプションの株数や発行価格を調べました
ストックオプション行使期間 | 株式の数 | 発行価格 |
該当事項なし | -株 | -円 |
ストックオプション(新株予約権)は上場段階で該当事項なしとなっています。
ベンチャーキャピタル出資もないため公開株数以外の株流通は少ないようです。
ツイッターでもIPO記事のチェックができます!
最新情報を手に入れたい方やレア情報、気になったことをツイートしています。IPO投資歴は14年と長くソーシャルレンディングも4年目突入!安定の利益でブログも14年目に突入。SANEI(6230)IPOの評価と申し込みスタンス
SANEI(サンエイ)IPOは上場時期に恵まれなかった銘柄でしょう。数ヶ月前であれば余裕で吸収でき利益も出ていたはずです。同社は中国大連市に工場があるそうですが新型肺炎で街ごと閉じられた武漢市とはかなり距離があります。生産への影響は現在のところなさそうですが、感染症が想定を上回る規模で発生及び流行した場合、間接的な影響を受ける可能性があると目論見に書かれています。
製造ライン中断による影響も考えられますが、商品が売れない事には業績に響いてくるでしょう。現段階ではあまり影響はなさそうです。
それよりも中国や台湾、インドネシア、タイ等のアジア諸国で事業活動を行っているためこちらに影響がありそうです。また為替リスクを回避するため円建取引を原則としているそうです。為替が大きく動くことで経営成績や財政状態に影響がある可能性があります。
同社の売上を確認する限り安定した事業を行っているように感じます。日本の景気が今後悪くなるようであれば株価も下がる方向に向かいそうです。
また2020年3月と4月に上場ラッシュとなっている要因の一つに、東証の市場区分再編があるそうです。そういえばそのような情報がしばらく前から出ていましたね。ただ景気悪化となれば市場区分再編どころではない気がします。
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